Liella!『リエラのうた』歌詞考察
第12回Liella!歌詞考察『リエラのうた』
作詞:宮嶋淳子 作曲:小幡康裕
今回はテレビアニメラブライブスーパースター!!特別パート『リエラのうた』について語っていこうと思います。
お久しぶりです!
なんとなくモチベーションがわかず、別件で原稿に取り組んでいたこともあって久々の記事公開になってしまいました。なぜ突然、今頃になって再開したのかというと……
なんと!!『Liella! First LoveLive! Tour ~Starlines~ 群馬公演Day1』現地参加してきました!!やったね!よっしゃー!
キャストの生歌とパフォーマンスを観ていたら、もう完全にときめいちゃったわけです。とりわけ印象的だったのが今回の記事で扱う『リエラのうた』でした。メンバーそれぞれがソロで情感をこめて歌い上げるんですよ。すごかったです。
実は『リエラのうた』についてはテレビ放送時から、あんまりピンとこなかったこともあって記事にするつもりはありませんでした。自分を含め、似たような感想を抱いている方って少なくないと思うんですよ。
そんなあなたにとって、この考察が『リエラのうた』の良さに気付くきっかけになりますように!
それではまず最初に宮嶋順子さんのツイートから紹介します。
【本日発売②】TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』特別パート「リエラのうた」全曲作詞しています。#リエラのうた は全曲を並べるとひとつの物語が見えてきます😊ですのでアルバムではTVで聴いた時とはまた違った角度でお楽しみ頂けると思います。#lovelive #Liella →続く
— 宮嶋 淳子 (@Junko_Miyajima) 2021年10月27日
→続き
— 宮嶋 淳子 (@Junko_Miyajima) 2021年10月27日
お花は紹介したりしなかったりだったので改めて
「Primary」クロッカス
「Memories」エーデルワイス
「Anniversary」ハマユウ
「Message」ヘレニウム
「Ringing!」カランコエ
「Dears」セントポーリア
「Departure」ペンタス
どれも #Liella!にぴったりの素敵なお花です😊#lovelive
『リエラのうた』は全曲を並べるとひとつの物語が見えてくる。
ということで今回の考察記事では七曲を通してどんな物語が紡がれているのか紐解いていこうと思います。いままではひとつの記事につき一曲だったのでちょっと変則的ですが、歌詞の世界観を大切に考察していきましょう!
その前にひとつ共有しておきたいのですが、本記事では楽曲を『歌詞で表現されていること』のみに絞って考察しています。アニメーションで誰が歌っていたか、物語のなかでどのような位置づけにあるかといった要素は楽曲を読み解くうえで大切なものではありますが、あえて『歌詞で表現されていること』のみを切り取ることで見えやすくなる魅力があるはず、と意図しています。
ではさっそく始めていきましょう!
さくっと内容を確かめたい方は目次から『まとめ』に飛んでください。
*曲を聴きながら解説を読むのがおすすめです!!*
目次
一曲目『Primary』
クロッカスの花がモチーフとして使われています。花言葉は「青春の喜び」「切望」
タイトルはいくつもの意味を含んだ言葉ですが「はじまりの」もしくは「本質的なもの」と訳すのが妥当でしょうか。
第一節と二節の歌詞はこうです。
木漏れ日の下くちずさむ
覚えたてのメロディ
とぎれるたびにそっと
寄り添うようにあなたの声
新しい季節の出会いは
なぜだか懐かしくて
増えてく気がしてる
かけがえのないうた
『寄り添うようにあなたの声』とあることから、歌い手『僕』のほかに『あなた』がいることがわかります。『リエラのうた』は全曲を通し、歌い手の『僕』が『あなた』との物語を紡いでいく構成となっています。
さて、解釈に悩むポイントですが『新しい季節の出会いは なぜだか懐かしくて』とはなにを意味しているのでしょうか。『新しい季節の出会い』が『なぜだか懐かし』い理由については、詩の全体を順番に読み解きながら考えていきましょう。
まず二節目には『新しい季節』と『出会い』そのたびに『かけがえのないうた』が『増えてく気がしてる』とあります。『増えてく』『かけがえのないうた』のひとつが、一節目にある『木漏れ日の下くちずさむ 覚えたてのメロディ』なのでしょう。そのとなりには『寄り添うようにあなたの声』があります。”教える”とか”指し示す”ではなく『寄り添うように』となっているところが『あなた』と『僕』の関係を示唆しているようです。
第三節に続きましょう。
風に吹かれて輝くページ
どんな景色を描いてゆこう
ひかりなかでふくらむ蕾
空を見上げていた
日記帳が風に吹かれてぱらぱらと捲れる様子が目に浮かびます。『風に吹かれて輝くページ』には、『どんな景色を描いてゆこう』とあるように、まだ何も描かれていません。白紙のそれは未来を夢見るように『木漏れ日の』『ひかりのなかでふくらむ蕾』です。
ここで注目したい個所は『空を見上げていた』←過去形なんです。『どんな景色を描いてゆこう』(ゆこう=行くの未然形+う)と未来を目指しているのに、なぜか『空を見上げていた』と過去形につながるのか、そこに『新しい季節の出会いは なぜだか懐かしくて』を読み解くヒントがあります。
第四節に続きましょう。
陽射しと遊ぶ水飛沫
ベンチまであとすこし
あてどもなく話そう
僕とあなたのこと
陽射しと遊ぶ水飛沫は公園の噴水を表しているのでしょう。写実的な描写が美しい一節ですね。同時に『僕』と『あなた』が一緒にいることが分かる箇所でもあります。(『Primary』以降の曲を読み解くうえで重要なポイントです)
第五節に続きます。
好きな言葉で埋めてくページ
それは予想もできない色で
肩を並べてほころぶ蕾
明日を夢見ていた
『肩を並べて』『あてどもなく』語り合うふたりは、お互いの『好きな言葉』をノートにつづります。描かれるのは『予想もできない色』の『明日』です。そうして『陽射し』の下『ふくらむ蕾』は『ほころぶ蕾』へと変わります。
そしてふたたび『明日を夢見ていた』←過去形です。ひとつまえの第四節では、ふたりが一緒にベンチまで歩いていく様子が描写されていたのに、ここで過去形が使われるのは意味があるはずです。
第六節に進みます。
風に吹かれて輝くページ
めくれていつか忘れないように
栞代わりにはじまりのうた
ずっとくちずさもう
めちゃめちゃ好きなパートです。第六節にはこの曲の要素がぎゅっと凝縮されています。少しだけややこしいので解説は後回しにしましょう。
先にふれておきたいのはこのフレーズです。『栞代わりにはじまりのうた』って最高に詩的な表現でしびれます。風にめくれる日記帳のなかにふと懐かしいページを見つける。それは輝かしい思い出で、自分たちの始まりが描かれている。そんな受け取り方もできるかもしれません。(複数の意味が重なった第六節なので、読者のみなさんもぜひいろいろな角度からそれぞれの解釈を楽しんでほしいです)
第七節に続きます。
優しく揺れる僕らの日々に
どんな景色を描いてゆこう
ひかりの中で色づく蕾
空を見上げていた
ひかり浴びて 空を見上げていた
↓注目ポイント↓
『どんな景色を描いてゆこう』←未然形+”う”
『空を見上げていた』←過去形
さて、全体を通してひとつずつ確かめながら進めていきます。
第三節と第五節にて『僕』と『あなた』は『風に吹かれて輝くページ』を『好きな言葉で埋め』て『明日を夢見て』います。第七節では『僕らの日々に どんな景色を描いてゆこう』とあるため『ページ』とは『日々』の比喩であることがわかります。
第六節ではそのページを『めくれていつか忘れないように』『栞代わりにはじまりのうた ずっと口ずさもう』と続きます。『ずっと口ずさもう』は未然形+意志を示す助動詞”う”なので、これから先のことを指しています。つまり第六節では”今現在”が描写されています。
書いている最中のノートに栞を挟むのは少し不自然です。普通は読み返している最中に『忘れないように』はさむのが栞ですね。このことから、この楽曲には過去と現在が混在していることが読み取れます。
読み返してみれば第七節も過去形と未然形が入り混じっています。同じ構造は第三節および第五節でも見られました。これは、それらの節が過去でもあり現在でもあることを意味しています。
反対に現在形もしくは未然形のみで構成されているのは第一節、二節、四節、六節です。それらの節は現在を描写しています。
さて、ここでようやく冒頭で触れた『新しい季節の出会い』が『なぜだか懐かし』い理由についてヒントが見えてきました。
未然形と過去形が混在する第三節、五節、七節で描かれているのは、これから始まろうとする未来をどう描いていこうか期待に胸を膨らませる現在の僕らの様子、そして同時にかつて期待に胸を膨らませていた過去の僕らの日々です。
つまり『新しい季節の出会い』が『なぜだか懐かしい』のは、かつての僕らを思い起こすからなんですね。楽曲のモチーフとして使われているクロッカスの花言葉は『青春の喜び』です。新しい季節との出会いは、きっといつだって胸の蕾をほころばせる春の日々なのでしょう。
この楽曲のタイトル『Primary』にはたくさんの意味があります。
【Primary】本質的なもの はじまりの
リエラのうたは全曲を並べるとひとつの物語が見えてくる。
『Primary』はその始まりであり本質でもある重要な楽曲だということを示しているようです。
長くなりましたが、これでようやく一曲目です。次の曲に進みましょう。
二曲目『Memories』
エーデルワイスの花がモチーフとして使われています。花言葉は「大切な思い出」「勇気」タイトルの和訳は「思い出」です。花言葉とタイトルからわかるように、この楽曲は過去に向けて歌われています。
歌詞を順番に紐解いていきましょう。第一節~三節はこうです。
うれしいときはいつも
手をつないで気持ち分けあう
知らない間に生まれた
僕たちのルール
つらいときには手を
見つめていると元気になれる
風に揺れてた蕾も
凛と綺麗に咲いた
ひとつの喜びが
大きなちからをくれるよ
ありがとう 心から
大切なMemories
『僕たちのルール』ということでこの詩を詠む主人格は『僕』です。以降の曲も『僕』の語りによって紡がれています。そして『風に揺れてた蕾も 凛と綺麗に咲いた』のフレーズからはひとつ前の楽曲『Primary』で描かれていた『ひかりの中で色づく蕾』から連続していることが分かります。
三節目の最後に『ありがとう 心から 大切なMemories』とあるように、この歌詞は過去に向けて歌われています。”うれしいときに手をつないだ思い出”があるから”つらいときでも手を見つめれば元気になれる”そんな大切な思い出の歌です。
先に進みます。第四節~六節はこうです。
かなしいときは肩を
寄せあいただ一緒にいたね
いつも通りの時間が
とまどいをほどく
楽しいときの笑顔
胸の奥にしまっておけば
雨にうたれても花は
虹を信じて咲くよ
ひとつの微笑みが
大きな勇気にかわるね
ありがとう 心から
大切なMemories
注目したいのは第五節にある『楽しいときの笑顔 胸の奥にしまっておけば』です。なぜ笑顔の思い出が胸の奥にしまわれているのか、それは『僕』と『あなた』が離れ離れになっていることを示唆しています。いつでも会えるなら笑顔を胸にしまっておこうとはなりません。『Primary』では一緒にいたふたりが『Memories』では別々になっている、それがこの曲を理解するポイントです。ふたりの別れを意識して聴くと『ひとつの微笑みが 大きな勇気にかわるね』の健気さが胸にしみます。
第七節から九節はこうです。
夢みる想いがいつか
枯れそうになっても
ほら過ぎた日々が希望そそぐ
ひとつの思い出を
集めた花束はきっと
きらきらいつまでも輝くよ
ひとつの喜びが
大きなちからをくれるよ
ありがとう 心から
大切な Memories
『あなた』と分かち合った思い出ひとつひとつを集めた花束が希望となって大きな力をくれる。いまは一緒にいなくても、大切な思い出は胸のなかで『きらきらいつまでも輝く』のです。
ところで蛇足かもしれませんが、ひとつ気が付いたことがあるのでメモしておきます。歌詞の第五節にある『楽しいときの笑顔』です。『とき』がひらがなになっていますね。これは言葉の使い方として正しくて、もし漢字で表記した場合『時』は『Time(時間)』を意味します。そしてひらがなの『とき』は『Situation(状態、状況)』を意味するんですね。わりと混合されて使われがちな『時』と『とき』ですが作詞のなかでは正しく言葉の使い分けがなされています。そこには『リエラのうた』の文学性が現れているように思えます。
では次の曲に進みましょう。
三曲目『Anniversary』
ハマユウの花がモチーフとして使われています。花言葉は「どこか遠くへ」「汚れのない」「あなたを信じます」タイトルは「記念日」という意味です。
第一節から三節はこうです。
もうどれくらいの時が経つの
あなたと出会って
消えては浮かぶ想い語れば
花さえ微笑んだ
気の利いた言葉
見つからないけれど
さよならではないよ はじまりさ
大切な記念日
今日の日まで頑張った自分
信じ続けて
遠く 手を振るよ
第一節では『あなたと出会って』『もうどれくらいの時が経つの』だろうと日々を振り返っています。では第三節にある『記念日』とは出会った日のことを指しているのでしょうか。その答えは第四節から六節にあります。なんの記念日なのか理解することで『さよならではないよ はじまりさ』『今日の日まで頑張った自分 信じ続けて 遠く 手を振るよ』の詩に深みが増すので、考察を続けましょう。
第四節から六節はこうです。
雨に追われて身を寄せ合う
いつかの木陰で
ためらいがちに告げてくれた
あなたの願い事
眩しくていまも
強く背中を押す
僕も行くよ 夢を追いかけて
ひそやかな記念日
どこかでまた巡り合えるまで
歩んでゆく
第五節にある『木陰』は『Primary』の冒頭にある『木漏れ日の下』を彷彿とさせるワードです。その木陰はふたりにとってきっと大切な場所なのでしょう。この曲では『雨に追われて身を寄せ合う いつかの木陰で』とあるため、なにかの出来事があって、ふたりだけの大切な場所で慰めあっていた遠い日を暗喩していると受け取ることもできます。ですが、ちょっと想像力を働かせて歌詞にこめられた情感の豊かさを味わってみましょう。
『木陰で』『雨に追われて身を寄せ合う』姿をちょっと写実的に想像してみてください。思い浮かべるのは、たとえば中学生のころ、夕立の降る夏の帰り道としましょう。駆け込んだ木陰から見上げる空は暗くて雨脚は強く、夏服はびしょぬれでシャツはちょっと素肌を透かしています。『あなた』の髪から落ちる雫がちょっと艶っぽいかもしれませんね。(ちなみに筆者としては『僕』と『あなた』の性別は男女で固定しない解釈を推します。親友同士かもしれないし、恋人同士かもしれない、言葉では定義できない親密な関係としておきましょう)頭上を枝葉に守られて、どしゃぶり雨の爆ぜる音は少し遠く、ふたりは小さな静寂のなかにいます。雨はまだ止みそうにありません。濡れた身体には夕風がちょっと冷たくて、どちらからともなく身を寄せ合います。そんなとき、ふと『あなた』は『ためらいがちに』『願い事』を語るのです。
『願い事』とはどんなものでしょうか。第六節で『僕も行くよ 夢を追いかけて』とあるため、『あなたの願い事』も将来の夢の話です。しかも『ためらいがちに告げて』いることから、ただの夢ではないことがわかります。文脈から察するに『あなたの願い事』を叶えるためには、ここから旅立たなくてはいけない類のものなのでしょう。つまりそれは、ふたりの別れの話でもあるわけです。
いま『僕』はそれをこのように振り返ります。『あなたの願い事』が『眩しくていまも 強く背中を押す』『ひそやかな記念日』『さよならではないよ はじまりさ 大切な記念日』。だから『ぼくも行くよ 夢を追いかけて』。なんだか記事を書いていて胸が熱くなっちゃいました。
ということで『記念日』とは第四節で描かれる『雨に追われて身を寄せ合う いつか』の日を指していました。
第七から八節はこうです。
僕たちは希望咲かせて
やがて種へとかわる
新しい場所を目指すため
さよならではないよ はじまりさ
大切な記念日
今日の日まで頑張った自分
信じ続けて
遠く 旅立つよ
『Primary』では蕾だったものが『Memories』で花となり『Anniversary』で花はやがて種へと変わります。『僕』と『あなた』は『希望咲かせて』『新しい場所を目指すため』『遠く 旅立』ちます。
ひとつ前の曲『Memories』はすでにふたりが別々の道に旅立ったあとの歌、そして『Anniversary』はそれから何度目かの記念日を迎えて振り返る歌という流れで物語は続きます。ということで、次の曲に進みましょう。
四曲目『Message』
ヘレニウムの花がモチーフとして使われています。花言葉は「涙」「上機嫌」
タイトルはそのまま「メッセージ」もしくはかなりの意訳になりますが「伝えたい想い」と訳してみましょう。
ところでこの曲、一人称が登場しません。これは詞の語り手が『僕』でもあり『あなた』でもあることを……意味してるかもしれないし、していないかもしれません。どちらも可能性はあるので好きなように読んでください。便宜上『僕』が語り手であると想定して考察を進めましょう。
第一節から三節はこうです。
歩き出した朝の景色
ずっと忘れないでいて
不安よりも高鳴り響く
街のコントラスト
橋を渡りあすを目指そう
青く澄んだあの空が
かなしい色に映るとき
つぶやくのさ
涙こぼれても 夢の種 芽を出すよ
なにもこわくない 行くのさ いま
『歩き出した朝の景色』は澄んだ朝日に照らされて、光と影のコントラストが鮮やかに街を飾ります。心を躍らせながら橋を渡れば視界がひろがり大きな青空が……けれどふと寂しさが胸を過ります。だけど『不安よりも高鳴り響く』『歩き出した朝の景色』『ずっと忘れないで』『あの空が かなしい色に映るとき つぶやくのさ』『涙こぼれても 夢の種 芽を出すよ』
ここでも『Primary』から続く花の移り変わりが描かれています。最初は蕾だったものが『Memories』で花となり『Anniversary』で花はやがて種へと変わり、『Message』にて新しい芽を出します。
続きの歌詞を見ていきましょう。第四節と五節はこうです。
嬉しかった夜の景色
ずっと忘れないでいて
花のように咲く街あかり
木々は風に歌う
険しい坂ものぼってゆこう
やさしい星の瞬きが
ある日雲に覆われて
さびしくても
歩き出した朝から時はすぎ、橋を渡ってたどり着いた街は夜を迎えます。想像しやすいように、ちょっとチープなたとえですが「夢を追いかけて東京にやってきた初めての夜」というシチュエーションはどうでしょうか。(んー、ちょっと発想が貧弱ですね)春の夜です。街の明かりはきらめいて、夜風はかすかに花の香りをはらんでいます。そんな『嬉しかった夜の景色』を『ずっと忘れないでいて』と歌っています。これは歌い手が自分自身に語り掛けている言葉なのか、それとも『あなた』に宛てた言葉なのか、解釈はふたとおりあります。正解はないので好きなほうを、もしくは両方とも選んでくださいね。
旅立つ道行はいつだって楽しいことばかりではありません。『険しい坂も』『やさしい星の瞬きが ある日雲に覆われ』ることもあります。だけど……次の歌詞に進みましょう。
第六節から八節はこうです。
涙あがったら 夢の虹 架かるのさ
なにもこわくない 願うよ いま
遠く離れても 同じ空 見上げてる
涙こぼすから 夢の種 芽を出すよ
なにもこわくない 誓うよ いま
かならず叶える
五曲目『Ringing!』
カランコエの花がモチーフとして使われています。花言葉は「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」タイトルは「鳴り響く!」と訳すのはどうでしょう。
ちなみにこの楽曲では一人称が『僕』なので、語り手も『僕』ですね。
ではさっそく、第一節から四節まで読んでみましょう。
やりたいのにできないこと
多くてため息をついたり
かっこつけて背伸びをしたあと
転んで悔んだり
そんな風にしていそがしく
時計の針は回るけれど
なにかひとつ気づくたび
小さな鐘がリン!と鳴る
嬉しくて楽しくて
涙の跡も誇らしい
あの花より可憐な鐘
一面に咲かせて鳴らせ!
率直な歌詞なのであまり解説する箇所もないのですが、二か所だけ取り上げてみます。
『なにかひとつ気づくたび 小さな鐘がリン!となる』このフレーズをわかりやすくたとえてみましょう。ここでは『僕』を高校生の吹奏楽部だとします。(社会人一年生でもいいです)楽器の演奏を何度も練習してきたのに『できないこと 多くてため息をついたり』『転んで悔んだり』そんな繰り返しの中であるときふと、『小さな鐘がリン!と鳴る』ように、自分が成長していることに気が付きます。『うれしくて楽しくて 涙の跡も誇らしい』とは、そういった様々な困難を超えたさきにある感情を表しています。
つぎに『あの花より可憐な鐘』のフレーズです。『あの花』とは、どの花のことでしょう。可能性のひとつは『あなた』が咲かせている花、もうひとつは不特定の誰かが咲かせる花です。この場合の花という単語には様々な意味が包含されているため説明するのが難しいのですが、また先ほどの吹奏楽部のたとえで読み解いてみましょう。たとえば素敵な演奏をする部活仲間、憧れの先輩、演奏はうまくなくても人柄の良さが魅力的な友達、それぞれがそれぞれの花を咲かせています。『あの花』とは、それらを指しているのだと考えていいでしょう。そこには遠く離れて夢を追いかける『あなた』が咲かせている花も含まれるかもしれません。
続いて第五節から七節はこうです。
僕は僕で、人は人さ
マイペースに頑張ればいい
頭では分かっててもやっぱ
誰かとくれべちゃう
なんとなく広がるモヤモヤ
まだ今日も持て余してても
ちょっとずつさ、進むたび
小さな鐘がリン!と鳴る
まよっても悩んでも
明るい未来 夢みよう
ここで気になるのは『僕は僕で、人は人さ』『ちょっとずつさ、進むたび』の箇所です。歌詞としては珍しく読点「、」が使われています。あえて使うからには、なにか理由があるはずです。読点は文の区切りに打つものですが、歌詞の場合はスペースを開けることで区切るのが一般的で……なんで読点を打ったんだろう。うーん。わからん。
ということで、これについては作詞家の宮嶋淳子さんに聞いてみましょう。宮嶋さん、これを読んでらしたらヒントください。
では八節から十節に続きます。
胸はずませるしあわせって
どんな場所にだってひそんでる
探して触れてワッと笑うたび
リン!と何度でも心の鐘が鳴る
ほらね、ひとつ気づくたび
小さな鐘がリン!と鳴る
うれしくて楽しくて
涙の跡も誇らしい
まだやれるさ
あの花より可憐な鐘
僕らしく咲かせて鳴らせ!
『Primary』では蕾『Memories』では花『Anniversary』にて花が結実し種へと変わり、『Message』にて芽を出して『Ringing!』では花を咲かせました。
ちなみにこの楽曲のモチーフとして用いられているカランコエは花の形が釣鐘状に咲くため、タイトルの『Ringing!』や『小さな鐘がリン!と鳴る』に通じるものがあります。あ、いまわかりました。『あの花より可憐な鐘』の『あの花』ってカランコエのことでした。
というわけで次の曲に進みましょう。
六曲目『Dears』
セントポーリアの花がモチーフとして使われています。花言葉は「小さな愛」「親しみ深い」タイトルは「親愛なる」を意味しており、一例としては手紙の宛名で「Dear かのんちゃん」みたいな使われ方をします。この楽曲も『あなた』に宛てた手紙なのかもしれませんね。
ではさっそく歌詞を読んでみましょう。
第一節と二節はこうです。
どんなことにでも小さなしあわせ
いまは感じてるよ
うまくいかなくて落ち込む日があっても
いつでも前をみてる
すぐそばで微笑みをくれる人
みんなにね、喜びを届けたい
この胸にやさしさが咲いたのは
そう あなたとつながっているから
この歌詞の語り手は『僕』です。『うまくいかなくて落ち込む日があっても』『どんなことにでも小さなしあわせ いまでは感じているよ』の歌詞から分かるとおり『Memories』『Anniversary』『Message』『Ringing!』『Dears』と曲を追うごとにだんだん気持ちが成熟していくのが読み取れます。これまでずっと自分の中の花をどうやって咲かせるか、悩んだり人と比べて落ち込んでいた『僕』が、この歌詞では『みんなにね、喜びを届けたい』と他者に与えることを考えることができるようになりました。
ところで、二節で登場する『すぐそばで微笑みをくれる人』とは誰のことでしょう。歌詞にはそれ以上のことが書かれていないため解釈は読み手に委ねられているのですが、いくつか候補はあげられます。①家族、②パートナー、③仲間、④友達あたりでしょうか。このうち②のパートナーが『微笑みをくれる人』だという説が筆者の推しです。逆説的に『あなた』はパートナーでないことになりますが理由は最後の曲『Departure』にてお話させてください。
続いて第三節、四節を引用します。
僕の両手では抱えきれない
気持ちたくさんあるけれど
どうしようもなくて泣きそうな日はそっと
誰かがつつんでくれる
もしそばで迷う人がいるなら
あたたかなぬくもりをあげたいよ
この胸にやさしさが咲いた日は
そう あなたの声が聴こえる
この歌詞からも『僕』の成長が見えます。『両手では抱えきれない 気持ちたくさんある』ときでも、不安や涙に視界を曇らせることはありません。『もしそばで迷う人がいるなら あたたかなぬくもりをあげたいよ』と『僕が』他者に『思いやり』の花を分け合うのと同じように、また『そっと』『つつんでくれる』他者もいることを信じられるようになりました。そんな『やさしさが咲いた』のは、あの木陰で語り合った『あなた』との日々があったからです。遠く離れていても『あなたとつながっている』という言葉にはそんな思いが込められていそうです。
五節から七節を引用します。
気がついたんだ みんな みんなやさしい
思いやりの中 愛が咲く
すぐそばで微笑みをくれる人
ありがとう 喜びを届けるよ
この胸に咲いている花たちを
そう あなたに見せにゆくから
僕を待ってて
『僕』と『あなた』の再会が示唆されて歌詞は締めくくられます。いよいよ次が最後の曲です。
七曲目『Departure』
ペンタスの花がモチーフとして使われています。花言葉は「希望が叶う」「願い事」
タイトルは「旅立ち」を意味します。
第一節、第二節はこうです。
あなたと思い出をたどるよ
たくさん泣いたし笑ったね
色んなことをこえて 気持ち
いまひとつにつながる
見上げてみて
あの星たちも瞬く
呼び合うように
『僕』と『あなた』がついに再会します。地上から見上げたとき、星々は星座のように結びついているように見えます。でも本当はそれぞれ何光年もの距離を隔てて、遠く呼び合うように瞬きます。まるで別々の道を歩んでも胸の中でつながりあっていた『僕』と『あなた』のように。
三節から五節はこうです。
ずっと胸に描いていた
夢が 夢が 花ひらいたよ
このきらめき詰めこんで
新たな旅に出よう
自分信じられない日も
あなたを信じて走ったよ
止まって進んでくりかえし
強くなれた気がする
ねえこれから
どんな未来が僕らを
待っているんだろう
『夢が 夢が 花ひらいたよ』のフレーズに二度繰り返される『夢が』は、ひとつではなく複数の『夢が 花ひらいた』ことを意味しているのでしょうか。さらには『僕』の夢と『あなた』の夢が『花ひらいた』ことも意味していそうです。
そしてふたりは『新たな旅に』出ます。ふたりの前には『どんな未来が待って』いるのでしょう。
第六節から八節はこうです。
もっと遠く行けるはずさ
夢が 夢が また芽吹いたよ
もうこの手を離さない
一緒に旅に出よう
あすが見えなくても
出かけるのさ
希望が道を 照らすから さあ
物語は続いてゆく
『もうこの手を離さない 一緒に旅に出よう』これから先のふたりは、もう離れ離れではありません。『物語は続いて』ゆきます。
九節と十節はこうです。
叶えたくて抱きしめてる
夢を 夢を 咲かせにいこう
このきらめき詰めこんで
新たな旅に出よう
叶える旅に出よう
僕らはいくよ 咲かせにいくよ
僕らはいくよ 咲かせにいくよ
ここでも『夢を』と『僕らはいくよ 咲かせにいくよ』が二度繰り返されています。まるで『僕』と『あなた』双方の歌声が重なり合って響いてるようですね。
さて『Dears』にて筆者は『僕』と『あなた』の関係はパートナーではないと考えていることを話しましたが、その理由は『Departure』の歌詞が恋愛感情を歌ったものではないことにあります。『僕』と『あなた』は一貫して『夢』を追いかけることで繋がりあっています。もちろん恋愛関係を透かし見ることも可能ではありますが、共に夢を叶える旅へと旅立つ仲間と読んだほうがよりロマンチックかな、と思うのです。
作詞家の宮嶋淳子さんは『全曲を並べるとひとつの物語が見えてきます』とおっしゃっていました。『リエラのうた』七曲すべてを考察し終えたわけですが、全曲を並べることで見えてくる仕掛けに気がついたでしょうか。解説していきます。
七曲目『Departure』の第六節には『夢が 夢が また芽吹いたよ』続いて九節では『夢を 咲かせにいこう』と書かれています。
これまで『Primary』では蕾『Memories』では花、そして『Anniversary』にて花が結実し種へと変わり『Message』にて芽を出して『Ringing!』では再び花を咲かせ『Dears』では花を他者に分け与えます。そして『Departure』にて新しい夢が芽吹き、蕾となって花ひらくのを待ちます。
こうして花の変化を追うと『Departure』のあとにもう一曲続いているのに気がつきませんか?
まとめ
最後の曲は『Primary』です。
まずモチーフとなっている花はクロッカス、花言葉は「青春の喜び」。そしてタイトルは「はじまりの」もしくは「本質的なもの」を意味しています。
もういちど歌詞を追いかけてみましょう。第一節から三節はこうです。『Departure』にて再会したふたりの歌だと思って読んでみてください。
木漏れ日の下くちずさむ
覚えたてのメロディ
とぎれるたびにそっと
寄り添うようにあなたの声
新しい季節の出会いは
なぜだか懐かしくて
増えてく気がしてる
かけがえのないうた
風に吹かれて輝くページ
どんな景色を描いてゆこう
ひかりの中でふくらむ蕾
空をみあげていた
『新しい季節の出会い』がなぜ『懐かしい』のか考察したのを覚えているでしょうか。歌詞の第三節にて『どんな景色を描いてゆこう』(未然形)『空をみあげていた』(過去形)と顕著に示されているように『Primary』の歌詞では過去と現在が混在しています。
『Anniversary』にて木陰から始まった夢
『Message』にてこぼれた涙から芽を出した夢
『Ringing!』にて咲きほこらせた夢の数々
そして『Departure』にてまた芽吹いた新しい夢
『リエラのうた』を通して『僕』はいくつもの夢と出会い、花を咲かせてきました。
『Primary』は夢をはじめる『僕』と『あなた』の最初のうたであるとともに、『新しい季節との出会い』をいくつも重ねた現在の『僕』と『あなた』のうたでもあります。『なぜだか懐かしい』気持ちになるのは、何度も繰り返してきたからなんですね。
『風に吹かれて輝くページ』の意味合いもまた変わってきます。ひとつは
【『Departure』にて新しい夢を見つけ、これから新しい景色を描いてゆくページ】
そしてもうひとつが
【風に吹かれて捲れた日記帳のように、ふと浮かび上がった輝かしい思い出のページ】
ひかりの中でふくらみ空を見上げる蕾は、現在の自分たち、そして過去の自分たちを比喩しているからこそ、未然形と過去形が入り混じっていたわけです。
続きの歌詞、第四節はこうです。
陽射しと遊ぶ水飛沫
ベンチまであとすこし
あとどもなく話そう
僕とあなたのこと
第四節は『Departure』で再会した『僕』と『あなた』が、これまでの旅を語り合っている様子を表しているのでしょうか。そして次の歌詞に続きます。
第五節を引用します。
好きな言葉で埋めてくページ
それは予想もできない色で
肩を並べてほころぶ蕾
明日を夢見ていた
新しい夢へと旅立つふたりの背中に、幼かったころの『明日を夢見ていた』ふたりが重なります。
第六節と七節はこうです。
風に吹かれて輝くページ
めくれていつか忘れないように
栞代わりにはじまりのうた
ずっとくちずさもう
優しく揺れる僕らの日々に
どんな景色を描いてゆこう
ひかりの中で色づく蕾
空を見上げていた
ひかり浴びて 空を見上げていた
『はじまりのうた』それは、幼かったあの日のうた、そして新しく旅立つ僕らのうたです。
あとがき
以上で『リエラのうた』の考察を終えます。
全曲通して聞くと短編小説を読み終えたような気持ちになれる詩的なアルバムでした。
※注釈※『Departure』に続く曲として『Primary』をあげましたが、『リエラのうた』はループ構造にはなっていません。『Departure』と『Primary』は多少ねじれていますが同じ時間軸、そこから先は未知の旅路です。
ちなみに本考察記事は全体で約14,000文字!すごいね!めっちゃがんばった!
ついでにこれは完全に妄想なんですけど『瞬きの先へ』って曲あるじゃないですか。『常夏サンシャイン/WishSong』に収録されてるあれって曲調が『リエラのうた』に似てません? っていうか『Departure』の続きっぽくありません? 細かく歌詞を読んでみると続きじゃないのがわかるんですけど、脳内補完して勝手に連作だってことにしてます。というのも、『Liella! First LoveLive! Tour ~Starlines~』のセトリでは『リエラのうた』からシームレスに『瞬きの先へ』と続くんですよ。あの流れが美しすぎて、完成されすぎてて、もうこれはちょっとの矛盾は無視してでも連作ってことにしたくもなるってやつです。ライブ見た人はきっとわかってくれるよね!?
そして最後に大切なことをひとつ。
広辞苑の第七一四版によると『考察』という言葉には『妄想』という意味が含まれるそうです。すべての答えは作者しか知らないので当然のことですね!
ってことで『リエラのうた』の考察はいかがでしたかー? とっても頑張ったのでTwitterのほうでRTとか、ブログのほうにコメントとかいただけると励みになりまーす!