Liella!『未来は風のように』歌詞考察
第7回Liella!歌詞考察『未来は風のように』
作詞:畑亜貴 作曲:山田智和
2021/08/08 追記(2番以降の歌詞について追加)
今回は8月4日発売予定のアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』EDテーマ『未来は風のように』について語っていこうと思います。歌詞全文が公開されていないためTV放送されたパートから考察を進めていきます。
(OP主題歌『START!! True dreams』についてはこちら)
テレビアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』第二話にてお披露目された『未来は風のように』
これもまた素敵な曲ですね。今回はアニメの内容と深く連動した歌詞のため、この楽曲を澁谷かのんが作詞した歌だ、と定義して考察していきます。
では、まずはどんな場面で流れた曲なのかおさらいしていきましょう。
アニメの終盤でかのんが言います。
「わたしね、音楽科の受験が終わったときに、何もかも終わったって思った」
「このまま終わりが続くんだなって思ってた」
「でも、やっと始まった!次のわたしが始まった!」
可可との出会いが、彼女にとってどんな意味だったのか伝わってくる台詞です。
そしてED主題歌である『未来は風のように』が完成したことを告げるかのんですが、可可が「聞きたいです」というと
「ひとがいるからここじゃ恥ずかしいよ。あとでデータ送るね」
尻込みしてみせます。しかし可可は引き下がりません。
「歌ってくれませんか」
「可可、かのんさんが歌っているところが見たい。かのんさんの歌が聞きたいです!」
「響かせましょう!この街にかのんさんの素晴らしい歌声を!」
可可はアニメ1話から徹底してかのんの手を引っ張って(背中を押すではなく”引っ張る”)きました。ここで尻込みしたら先へ進めない、いまだからこそ歌ってほしい。そんな強い願いがこめられているようです。
そして始まります。歌詞を引用しつつ考察していきましょう。(発売前ですが字幕がついていたので正確な歌詞がわかるのが良いですね)←発売されました
未来は風のように
僕らを呼んでるんだ
何が待ち受けてるか
誰も知らない
それでも進みたいんだ
だって 後悔したくないよ
こころ押さえつけるの無理さ
みんな 自由になろう
畑亜貴さんの作詞がまた炸裂します。この楽曲、可可が書いた原案をもとにかのんが作詞作曲している設定なんです。まるでひとりの少女(もしくは少年)が語っているかのような言葉選びにセンスが光ります。またここの部分「未来は風のように 僕らを呼んでるんだ」はテレビアニメ第1話挿入歌『未来予報ハレルヤ!』にある「交差点 はしゃぐ風 スカートひらり踊る」を連想させるようです。風=未来の予感を指しているのでしょうね。
さてアニメ本編では「何もかも終わった」「このまま終わりが続くんだ」そう思っていたかのんですが本当は「諦めないキモチ」と「歌が好き」な「こころを押さえつけ」ていたんですね。「自由に」なるきっかけをくれたのは可可ですが、歌詞は続きます。
あきらめない! 決めたから
手を引っ張ったのは可可だけど、そう決めたのはかのん 自身です。決意はすでに歌詞のなかで表明していた、かのんの中では”すでに始まっていた”わけです。この構図は同じく畑亜貴さんが作詞した『始まりは君の空』(考察記事はこちら)でも登場します。サビの部分ですね。
始まりは君の空
空に描くのはどんな どんな夢か教えて
便宜上、このセリフを人物Aによるものとします。夢を描いたきっかけは君の(人物Bの)空でした。しかし、続きの歌詞にて人物Bはこう返答します。
始まれば君の空
未来への道は (中略)
きっとあるよ あるんだ
だから確かめに行こう
「始まれば君の(Aの)空」なんだ、人物Aのなかではすでに夢が始まっているんだとBは指摘します。夢を目指すきっかけを示しかのんの手を引いた可可、そして「諦めない 決めたから」次のわたし(⇒夢⇒空)を始めようと決意したかのんの関係性を彷彿とさせます。
『未来は風のように』に話を戻します。サビに進みましょう。
信じることが大事だと
自分に言い聞かせたら
もっと もっと
遠く目指してみよう
小さな存在だけど
大きな夢があるから
負けないよ
さあ 一緒に飛ぼうよ
「小さな存在だけど 大きな夢があるから」このフレーズは『私のSymphony』「ちっぽけな昨日までの私じゃない 奏で始めたんだ夢を」や『始まりは君の空』「星の光よりも小さな輝きだけど いつか大きくなる気がして」に通じるものがありますね。
そして同時にかのんの決意表明でもある情感こもった歌詞でもあります。「さあ 一緒に飛ぼうよ」の部分も『始まりは君の空』にある「ほら一歩目を一緒に飛ぼうよ」を彷彿とさせます。
畑亜貴さんの作詞は過去作や関連楽曲と絡めつつ、脚本やキャラクター性をも反映させて様々な意味を内包した多重構造になっているのが興味深いところです。
2021/08/08 追記
8月4日にEDテーマ『未来は風のように』が発売されたため、2番以降の歌詞についても考察を進めていきます。
やはり2番の歌詞が追加されると楽曲の解釈の幅がぐんと広がりますね。特に「風」の意味合いに別の要素が追加されています。では、歌詞を参照しつつ紐解いていきましょう。
想いは風になって
明日を動かすんだ
いつも予想できないことが起こる
注目したいのは「想いは風になって」の部分です。1番の歌詞「未来は風のように 僕らを呼んでるんだ」と連動することで「未来=風=想い」の構造が作られています。言い換えると「想い」が「未来」を「動かすんだ」となります。こういうダブルミーニングを詩の中に入れ込むのは筆者好みの構造です。
やっぱり進みたいんだ
好きをしっかり見つめたくて
心をごまかすなんて無理さ
夢に素直になろう
逃げたくない!
向き合えば
きっと分かる 頑張る意味
挑戦しようよ
このパートはアニメで作詞を担当した設定になっている澁谷かのんの決意が現れています。「諦めない気持ち」というコンセプトがしっかり貫かれている楽曲だとよくわかるポイントですね。「夢に素直にな」って「向き合えば」「頑張る意味」が「きっと分かる」「挑戦しようよ」と前向きでひたむきな台詞が連続しています。熱いですねー。体育会っぽさあります。かのんちゃんはけっこうストイックなタイプなんでしょうか。
出会って変わり始めてる
君の未来も変わるよ
もっと もっと熱い光をつかもう
小さな僕らがいつか 大きな夢叶えるよ
本気で飛ぼう さあ一緒に飛ぼうよ
2番のサビです。1番のサビは「自分に言い聞かせ」るものでしたが、こちらでは「君の未来も」「小さな僕らが」とあるとおり、より強く「一緒に飛ぼう」の側面が強調されています。
ところで、ここに出てくる「君」とはいったい誰のことでしょうか。アニメ2話の段階ではかのんと可可のふたりを指すと思われますが、今後の展開を考えると恋やちさと、すみれが含まれるだろうことは予想できます。しかし、ここはあえてもう少し解釈を広く、聞き手である”あなたも”含んでいると仮定しましょう。すると、ここまで語りかけるように展開されてきた歌詞の世界が、アニメの向こう側だけでなく聞き手がいる現実の”あなた”のところまで繋がってきます。
アイドルの輝きは自ら発するものに加え、観客のサイリウム(←比喩です。サイリウムに限らず応援や憧れの気持ちなどたくさんの要素を含みます)の光に照らされることで成立します。どちらも一人だけでは輝けません。アイドルは観客を応援し、観客はアイドルを応援することで「さあ一緒に飛ぼうよ」となるんですね。かのんの作詞はスクールアイドルとしての(まだなってはいないけれど)視点に立ったものだと分かるエモポイントでした。
さて続きを読み解きましょう。
未来は風のように自由だよ 自由なんだ
どんどん高く飛んで 夢を描こう
ここでも「未来=風」の構図が出てきます。前述のとおり「風=想い」ということで、心は「風のように自由」で「どんどん高く飛んで 夢を描こう」と置き換えることができます。夢へと挑戦することはとても怖くて、自分の真価が試されているようで足がすくんでしまう、挫折が目に見えているようで立ち止まってしまいたくなる、そんな悩みや不安もあるけれど「未来は風のように」「自由なんだ」だって「逃げたくない!」「心をごまかすなんて無理さ」「夢に素直になろう」なのです。
そこでラストサビに入ります。1番のサビの繰り返し+αとなります。
信じることが大事だと
自分に言い聞かせたら
もっと もっと遠く目指してみよう
小さな存在だけど 大きな夢があるから
負けないよ さあ一緒に飛ぼうよ
本気で飛ぼう さあ一緒に飛ぼうよ
ここまで来るともはや説明も考察も蛇足ですね。
ひとつ感じたことは「さあ一緒に飛ぼうよ」の部分です。歌詞を読めば「さあ一緒に」=「SaAIxtuSyoNi」(ローマ字表記)と分かるのですが、歌詞なしだと「最初に」=「SaISyoNi」に聞こえません?これは深読みのしすぎなきらいがありますが、まずは最初に飛ぼう! といったメッセージを感じたりもしました。意図的なのかなー。どう思います?
と、いうことで。
『未来は風のように』については以上です。ここまで読んでくださりありがとうございました!!それでは、また次回お会いしましょう!
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(繰り返しますが当ブログで行っているのは歌詞中心の考察です。歌唱やアニメーションを含めた全体の考察とは角度が異なるため解釈はこれに限らないことを注釈します)